Creative Sound Blaster沼で溺れそうになる

Sound Blaster沼は広くて深い。

古いAT(DOS/V)機を構築しようと思った元々理由の一つが、ISA版Sound Blasterを使うことだった。しかしその実、各製品の違いをあまり理解していなかった事に後から気が付いた。

何となく、Sound Blaster 16 -> AWE32 -> AWE64の順に高機能だと思っていたという点においては間違いがないのだが、モデルの系譜を理解せずに高い安いだけで考えていたところがある。その辺の認識を整理するきっかけになったのは、以下のYoutubeのチャンネルだ

PhilsComputerLab Sound Card Reviews
https://www.youtube.com/watch?v=kcAicGVHNUU&list=PL5T8bmLxd_T0EaPr1jxxoBT5t14D1yhqd

Youtube素晴らしい。

SOUND BLASTER 誕生30年
https://jp.creative.com/camp/sb30year/

公式サイトも素晴らしい。

上記でお勉強した上での私の歴史解釈はこんな感じ。

1987年 Creative Music System sound card発売

Sound Blasterの歴史は先ず、独自規格である「Creative Music System (CMS)」のサウンドカードから始まった。このCMS、AT版ソーサリアンでサポートされているのを聞いたことがあるが、ポコポコした音がする。AT版ソーサリアンは後述のAdLibとMIDI(MT32)もサポートされており、いずれも非常に「残念な」音がすることで定評がある。

1990年 Sound Blaster 1.0発売

競合する製品(AdLib Music Synthesizer Card)との互換性のためにOPL2 FM音源を取り込み、PCMとゲームポートを追加した。AdLib製品はFM音源だけだったので、この「全部入り」構成がユーザーに受け入れられた。
DOOM辺りのゲームの設定がBGM(FM音源)と効果音(PCM)で分かれているのは、元々AdLibにはPCMが無く、Sound Blasterが後付けで付けたからだ。

この時点でSound BlaserはAdLib + CMS + PCM + ゲームポート(MIDI)という複合カードになっていてそれが売りになっている。
ゲームをするならSound Blasterを付けるみたいな感じで主流化したのだろう。PC-9801における26K音源(PCM付いてないけど)みたいなもんだ。
(この2つは、16bit世代のデザインに由来した音源を32bit世代でも引き続き搭載している点で共通点がある)

BGMと効果音が別系統のハードウェアになった。というのが日本のPCゲーム事情と大きく違うなと思ったところだ。日本はFM音源のみでBGMと効果音を鳴らす必要があったので、高機能な音源ドライバが必要となり、結果、FM音源が異常進化したという進化系に至ったと思うが、上記のDOOMの例もそうだが機能が分離していると、BGMだけならMIDI並の機能で充足する(効果音割込みとか要らない)し、高機能化をしたいなら(音源ドライバではなく)MIDIベースで高機能化すれば良いじゃないかという方向性で進化したのだろう。非常に興味深い。(ここには書けていないけど、Apple製品はまた別の進化系だろうなぁ)

1992年 Sound Blaster 16発売

1990年辺りになると、Windows 3.0(Multi Media Edition)上のマルチメディア(MIDIとCD-ROM)の需要が発生していて、その需要に応えるべくCD-ROMインターフェースを追加、PCMをCDと同じ16bit/44.1Khz化した。MIDI対応のためのWave Blasterボードが作られ専用のコネクタが付いた。日本だと、Windows 3.1でマルチメディアが流行ったのだが、英語圏ではWindows 3.0で既に流行っていたようだ。
Sound Blaster製品は「全部入り」をコンセプトにしているように伺えるので、Sound Blaster 16もマルチメディアをやるならSound Blasterみたいな感じのノリで製品化していたのだろう。

このCD-ROMは、IDEのCD-ROM規格が成立する前(成立は確か1994年頃)だったので独自規格で実装されている(独自実装といってもコマンドは恐らくはSCSIかATAだと思うのだが)。
時期で言うと1990~1994年位の間の話で、Windows 95時代になるとCD-ROM I/F規格がIDE(ATA)に統合されるので、Sound BlasterにCD-ROMインターフェースがあるのは1990~1994年辺りの製品になる(故に、1994年製のSound Blaster AWE32にはCD-ROM I/Fがある)。

最近気づいたのだが、上記の機能をほぼ上記の設計のままPC-9801に持ってきた周辺機器があった。98ノート用の拡張機器IO DATA CDBOX-SB(Sound Blaster(98)付モデル)だ。これのCD-ROMはSound Blaster I/Fで、Sound Blaster(98)上にMIDI Blasterが載るようになっていた。
一回セットアップしてしまうと、環境切り替えが何か上手くいかない。ノートとしては使えなくなる厄介な製品だった記憶がある。

1994年 Sound Blaster AWE32発売

MIDI Blasterで実現していたMIDI機能をEMU社のプロセッサを使用してオンボードで実現した。MIDI Blasterのコネクタは(機能が重複するので)このタイミングで削除、代わりにMIDI機能が使用する音源用メモリの増設コネクタを追加する(初期型AWE32は30pinのSIMM、後期AWE32と後述するAWE64は独自規格)。

1996年 Sound Blaster AWE64発売

ハードウェア機能的にはAWE32とほぼ同等、設計の見直しとソフトウェアによる機能強化(MIDIの発音数の増加)を行った。ほぼ同等といったが、IDE CD-ROM策定後の製品なのでCD-ROM I/Fは無い。ソフトウェアによる機能強化が無い場合、AWE64はS/N比の良いAWE32位の存在になる。

というところで、ISAのSound Blasterの歴史は終わり。

「全部入り」をコンセプトにしていた頃、大体1996年位までは勢いがあったが、Windows 9xが本格的に普及し、CD-ROMが標準規格化される、PCM機能がAC97規格で統一される、OS(Windows Me)が標準機能としてSoftware MIDI(GS)を持つ等の標準化に伴ってSound Blasterのコンセプトは大幅な変更を余儀なくされていたっぽい。その辺の打開策がSound Blaster AWE64辺りから良く出てくる「S/N比が凄くいい!!」みたいな謳い文句だったのかなぁと振り返る。

その後のCreativeは、ISAバス版と互換性のあるPCI版Sound Blasterの開発が出来ず、当時Sound Blasterとの互換性に定評があったEnsoniqを買収した。
そのEnsoniqのIPで作ったのがSound Blaster Live!(その前にSound Blaster 64 PCIという黒歴史があるけど)だ。

さらにその後、Sound Blaster AudigyまではDOSドライバのサポートがあったが、Sound Blaster Audigy 2ではDOS用ドライバの提供が無くなった。
DOSでゲームという話だとSound Blaster Audigyまでとなるんだろう。

何にせよ、30周年を迎えることが出来たSound Blasterが超一流のブランドになったことは疑いなく、今後もPCで音と言えば先ずはSound Blasterだろうという感じででこの話題は終わり。